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道代は肩にかけたショールごと肩を抱きながら、
さらりと言う。
「あなた……秋良と……」
つとめて、
普通に言おうとして、
道代は言い淀んだ。
沈黙が重い。
おそらく、
昨晩のことを言っているのではあるまい。
多分……あの事だ。
彼は思いきって言った。
「お気付きだったんですね。
父の葬儀の日のこと」
「ええ、
そう」
溜め息をひとつ、
ついて道代は続けた。
「私も、
あの子の母親です。
娘がひとりでは着られない服を、
私が着せたように身につけていなければ、
一目でわかります」
今度は慎一郎が溜め息をついた。
「申し訳ありませんでした、
自分は――」
「あの子は、
お兄さんと本を読んでお話して楽しかった、
としか言わないし。
今も昔も嘘がつけない子だから……。
私が危惧した事はなかったと信じているのだけど」
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