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足音を忍ばせ、
階段を昇り下りした彼女の手には、
クッキーが入っていたピンクの缶があった。
いかにも年代物、
ところどころに子供らしいシールが貼られ、
剥がれ、
色があせている。
「宝物入れだったんです。
あの、
子供の頃から使っているから、
あまりきれいじゃないですけど」
中に入っている、
継ぎのはいったおもちゃの指輪に、
彼は目を細める。
「まだ持っていたんだね」
「覚えていて、
くれたんですね」
「忘れるはずがない。
あんなに喜んでいたのに? 私が女性に初めて贈った『指輪』だからね」
「とても嬉しかった、
あの時」
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