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「それを聞いて思った、
母は君に会っている、
と。
君は話し方が私の母に良く似ているから」
「私……気付かないうちに、
慎一郎さんのお母様と生きてきたんですね」
ほっそりした指を持つ佳人、
彼を育てた人。
どんな女性だったのだろう。
「もう一度、
お会いしたいわ」
ぽつりと言う。
「今、
会って、
たくさんお話をしてみたかった」
起こりえない風景が、
慎一郎の中に去来する。
くるくると身軽に飛び回る母と、
変わらない速さで隣に立つ秋良。
大変かまびすしく、
そしてしっとりと語り合うであろうふたりを、
自分と父が眺めている様を。
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