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【3】 あなたが ほしい
慎一郎が目を覚ましたのは、
額に触れる冷たい感触からだった。
冷やした濡れタオルが心地良い。
子供の頃は、
よくこうして熱を出した。
母の触れる手やタオルを替える父の存在が嬉しかった。
けれど、
現実問題、
両親から看護を受けるのは不可能だ。
なら――
「起こしてしまいました?」
気遣わしげに掛ける声のタイミングは絶妙だ。
薄く目を開けた先には秋良がいた。
「ごめんなさい、
夕食をご一緒にと思って電話したのですけどお出にならないから、
呼びに来たんです。
電気が点いていたし……。
上がってしまったのですけど……。
慎一郎さん、
倒れているから、
驚いてしまって……」
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