ー 6 ー 茉莉花の日記 #2

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「それは勘弁してくれ」  笑う声も乾いて痛々しい。  この人が寝込む様子は想像できなかった。 私が知る限り、 珍し過ぎるのではなかろうか。  額にタオルを乗せ替えて、 秋良は一旦外へ出る。 実家へ、 夜着と、 食事と、 幾ばくかの薬、 その他足りない物を取りに戻る為に。 「風邪より疲れかもね。 男の人は案外弱いから。 すぐ熱を出すわ」  と秋良に看病グッズを渡しながら道代は言った。 「思い出した、 高校の頃は熱を出して何度か倒れていたわね」 「そうだった?」 「ええ、 『お兄ちゃんが死んじゃう』って泣きながら走って呼びに来たことがあったけど。 忘れちゃった?」
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