26人が本棚に入れています
本棚に追加
遠い記憶を追ってみる。
そんなことがあったような、
なかったような……。
よく覚えていない。
「それで、
お前はどうするの」
「落ち着くまで付添を。
汗もすごいし、
心配だもの。
ダメ?」
「……そうね、
帰りが遅くなるようなら連絡しなさい」
言って、
娘の反応を見て付け加えた。
「泊まりがけになっても、
必ず電話すること。
家のカギを掛けられなくて困るでしょ」
「うん。
わかりました」
今晩、
きっと秋良は帰ってこない。
てきぱきと支度をしながら気持ちは彼に飛んでいる娘の後ろ姿に、
遅まきながら愛する男を気遣う女の姿を見た。
娘は母の手を離れたと思った。
最初のコメントを投稿しよう!