ー 6 ー 茉莉花の日記 #2

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 遠い記憶を追ってみる。 そんなことがあったような、 なかったような……。 よく覚えていない。 「それで、 お前はどうするの」 「落ち着くまで付添を。 汗もすごいし、 心配だもの。 ダメ?」 「……そうね、 帰りが遅くなるようなら連絡しなさい」  言って、 娘の反応を見て付け加えた。 「泊まりがけになっても、 必ず電話すること。 家のカギを掛けられなくて困るでしょ」 「うん。 わかりました」  今晩、 きっと秋良は帰ってこない。  てきぱきと支度をしながら気持ちは彼に飛んでいる娘の後ろ姿に、 遅まきながら愛する男を気遣う女の姿を見た。  娘は母の手を離れたと思った。
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