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「……今は何時だ? 何故ここにいる」
「夜の十時を回ったところ。
あなたの様子が普通じゃないからここにいます。
心配ですもの」
「君のご両親も心配する、
帰りなさい」
「家には付き添うって電話してあります。
今日は私が看ていますから、
あなたは寝んで」
「そういう意味じゃない」
一瞬、
慎一郎の目に剣呑な光が浮かんだと思った時、
握られた手を強く引き寄せられ、
秋良は彼に抱き留められた。
病人でも力は強い、
いや、
だから、
加減ができない。
「言ったろう、
僕は男だと」
あっさり彼女は彼に組み敷かれ、
今は上からのし掛かられていた。
とても素早かったので、
秋良は面食らう。
力は強い。
でも、
それ以上に身体は熱い。
この熱さは、
病人の熱だ。
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