ー 6 ー 茉莉花の日記 #2

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 唇を塞ぐキスは、 深く、 噛みつくように容赦ない。 絡みつく舌は強く、 彼女を嬲る。  身体を探り、 服の合わせ目から入る指先もどちらも熱くて昂ぶりより心配の方が先に立つ。 目的を持って女の身体を弄ぶ男の手なのに。 心はどんどん冷静になる。  彼の中では、 止せと静止する声があるのに、 女が欲しい、 貪りたいと願う声もする。 ひやりとした肌は指先に気持ちが良い、 柔らかい胸に歯を立て、 もっと深く、 入り込みたいと。  だが――気ばかり急いて、 昂ぶりを迎えない、 身体が、 使い物にならない――。  頭が、 身体が、 重くて駄目だ。
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