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「私、
何を見ていたんだろう、
あなたのこと。
少し前の秋良はここにはいなくて、
全然違う私になったみたいで」
「壊れた、
と兄に言われた。
もっと壊れて素の自分に戻れ、
と」
「そうかも」
境内の石畳に踵を取られ、
躓きかける彼女の腰を抱える、
手。
以前のふたりは、
縁側で茶を飲む老人のようだと揶揄されていた。
お互い、
近付くでもなく離れるでもなく、
そこにいるだけの存在。
自分も、
静かな時を共有できる関係だと思っていた。
いずれ、
そうなれる日が来るだろう、
でも、
今のふたりには早すぎる。
達観するには歴史が足りない。
穏やかな時間はもっと先でいい。
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