ー 7 ー 慎一郎と 秋良の愛 #2

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 自分を『私』から『僕』と呼ぶようになって、 ひと皮もふた皮もむけた気がする。 自然体になった。 時折、 第三者には『私』で話しているのを聞くと、 違和感を感じるくらいだ。 聞き慣れているのは『私』の方なのに。  切なく片想いをしていた当時は、 手が届かなかった人。  恋人として、 婚約者として、 そして今日、 役所へ婚姻届の提出を済ませたふたりは、 夫婦として歩んでいく。  よく引き合いに出されるのが、 昼間は貞淑な妻、 夜は娼婦のように、 という例えの逆が、 慎一郎には当てはまる気がする。 身体を重ねる度、 思う。 この人は、 本当に女を知り尽くしている、 ということを。
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