ー 7 ー 慎一郎と 秋良の愛 #2

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「あっという間だったな」  と慎一郎は言う。 「あなたが待ったの? 私が待たせたの? どちらかしら」  どちらも違うね、 と彼は言う。 「時が性急になるのを許さなかったんだ、 多分……。 赦し、 赦されるのをお互いに受け入れ、 溶け合えるまで、 長い時間が必要だった。 やっと、 僕たちは結ばれ、 先へ進める、 ふたりで」  お互いが寄り添えるようになるまでの月日は、 淡い恋心から愛へ育つまでの期間としては長すぎるくらいだった。 年齢差も、 ふたりの間にあったお互いだけが知る秘密もありはしたけれど、 彼女を戯れでも『恋』を楽しむ対象としなかったのは、 慎一郎の、 名を体で表すかのような、 慎重さがあったからだった。
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