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「あっという間だったな」
と慎一郎は言う。
「あなたが待ったの? 私が待たせたの? どちらかしら」
どちらも違うね、
と彼は言う。
「時が性急になるのを許さなかったんだ、
多分……。
赦し、
赦されるのをお互いに受け入れ、
溶け合えるまで、
長い時間が必要だった。
やっと、
僕たちは結ばれ、
先へ進める、
ふたりで」
お互いが寄り添えるようになるまでの月日は、
淡い恋心から愛へ育つまでの期間としては長すぎるくらいだった。
年齢差も、
ふたりの間にあったお互いだけが知る秘密もありはしたけれど、
彼女を戯れでも『恋』を楽しむ対象としなかったのは、
慎一郎の、
名を体で表すかのような、
慎重さがあったからだった。
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