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「ええ、
あなた」
わざと、
強いアクセントで応える。
『あなた』と話しかけられると、
このひとことに慣れていない慎一郎は照れ笑いを隠さない。
小さな受け応えを重ねる時すら愛しい。
差し伸べられる手に誘われ、
秋良は慎一郎の腕に包まれる。
上質でしなやかなウールの生地は肌に心地よい。
しばらくもたれていると、
背に回される指先が、
親愛の情以上の動きで触れてくる。
スイッチが入ったように、
触れ合いが愛撫に変わるから、
その度戸惑い、
嬉しくなってしまう秋良も、
今回ばかりはそうもいかない。
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