ー 7 ー 慎一郎と 秋良の愛 #2

21/33
前へ
/35ページ
次へ
「ええ、 あなた」  わざと、 強いアクセントで応える。  『あなた』と話しかけられると、 このひとことに慣れていない慎一郎は照れ笑いを隠さない。 小さな受け応えを重ねる時すら愛しい。  差し伸べられる手に誘われ、 秋良は慎一郎の腕に包まれる。 上質でしなやかなウールの生地は肌に心地よい。    しばらくもたれていると、 背に回される指先が、 親愛の情以上の動きで触れてくる。 スイッチが入ったように、 触れ合いが愛撫に変わるから、 その度戸惑い、 嬉しくなってしまう秋良も、 今回ばかりはそうもいかない。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加