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学長室の元を辞したふたりは、
扶桑館へ向かった。
老朽化に伴う改装工事に取りかかっている扶桑館は、
外装を覆う足場組みが終わり、
化粧直しが終わるまでの間は施設は従来通り使えるが、
外観は隔絶される。
慎一郎の控え室に通され、
ぱたん、
とドアを閉める彼に、
あら、
と秋良は振り返る。
いつもは薄く、
靴先が入るくらいの隙間を空けているのに。
「訪ねてくる者もいまい」
秋良の問いに先回りして、
慎一郎は答え、
カーテンを開けた。
防音シート越しに日差しを浴びた室内は、
暖かく、
空気が柔らかい。
「ここから、
君が来る様子を見ていた。
心待ちにしていたよ」
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