ー 7 ー 慎一郎と 秋良の愛 #2

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 学長室の元を辞したふたりは、 扶桑館へ向かった。  老朽化に伴う改装工事に取りかかっている扶桑館は、 外装を覆う足場組みが終わり、 化粧直しが終わるまでの間は施設は従来通り使えるが、 外観は隔絶される。  慎一郎の控え室に通され、 ぱたん、 とドアを閉める彼に、 あら、 と秋良は振り返る。 いつもは薄く、 靴先が入るくらいの隙間を空けているのに。 「訪ねてくる者もいまい」  秋良の問いに先回りして、 慎一郎は答え、 カーテンを開けた。  防音シート越しに日差しを浴びた室内は、 暖かく、 空気が柔らかい。 「ここから、 君が来る様子を見ていた。 心待ちにしていたよ」
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