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今はシートで囲まれているので何も見えないが、
彼を訪れて建物を見上げた過去、
確かに窓辺に立つ姿を何度か目撃した。
そんな素振りを微塵も見せず、
素っ気なく迎えられていた日々を思い出す。
「素直じゃないんですもの」
秋良は苦笑する。
「待っていたのなら、
もっと歓待して欲しかったですわ」
「だから、
今は隠さないだろう?」
机に軽く腰掛け、
ボトムのポケットに片手を入れてこちらをみる慎一郎に、
秋良はドキリとする。
この人は変わった、
と秋良は思った。
男の色香があるとしたら、
今のような何気ない仕草で感じる、
伝わるものだろうか。
会えば会う程、
見たことのない顔があるのに気づかされる。
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