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気がつくと、足元に自分の体が転がっていた。
この足元とはもちろん誰でもない、自分のものだ。つまり今、俺は倒れている自分の体を見下ろすという異常な状態にあった。
(ん、と……俺は何をしてたんだっけか)
夜風に木々のざわめく深夜、時計の針は午前二時を指し示している。
この時計は〝立って見下ろしている自分〟ではなく〝倒れている自分〟が身につけているものだ。立っている方の自分には、倒れている自分が身につけている物の一部が装備されていなかった。
それは腕時計であり、靴であり、背負っていたリュックサックであり。
そして。
(ああ……そうだ)
――首に巻きついていたロープもまた、立っている今の自分の首を締めつけてはいなかった。
そう、俺はほんの僅か前に首吊り自殺を図ったのだ。
場所は近所の公園の端にある雑木林のような場所。手頃な木にロープを掛けたのだが、どうやらリュックを背負ったまま吊ったからか枝が重さに耐えきれず、地面に落下して転がったらしい。
証拠として、転がる自分に巻きついたロープの先には、荷重に耐えきれなかった枝の亡き骸が道連れに横たわっていた。
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