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 同窓会から早3日。俺はまだあの日の衝撃を忘れられずにいた。ドラマで見る様なトリックに、同じく作中の探偵の如く事件を解決したあの男。最近は理解しがたい動機から生じる犯罪が多いため、不謹慎な言い方だが、ああいうドラマチックな事件は本当に珍しいのだ。  よくわからない事件。例えばこれだ。 「被害者は野本茂雄42歳。証券会社勤務。死因は……」 「失血死ですか」  誰が見ても失血死だとわかる。白いカーペットが赤黒く染まっている。乾いた血だ。  これで3件目。皆同じく失血死、しかも大量に流れ出ている。これはこれでショックの大きな事件か。  マンション内で起きた事件。住人が何かを目撃しているかもしれない。 「首はどうだ?」 「ああ……ありますね」  現在起きている事件と同じ犯人の仕業だ。犯人は必ず、首筋に小さな穴を残している。吸血鬼を気取った者の犯行。くだらない輩がいたものだ。しかしこの様子を見ると、そいつには血を好む傾向もあるのかもしれない。危険な愉快犯だ。こんな調子で人殺しを続けられたら溜まったものではない。  事件は既にネット上でも話題になっており、掲示板等では犯人になりすまして犯行予告を書き込んだ馬鹿もいる。本当に迷惑な話だ。どこかの小学校にも謎の犯行声明が送りつけられ、集団下校することになったとか。結局怪しい人物は現れず、3日後犯行声明を出した高校生が逮捕された。 「よし、じゃあ引き続き捜査を。近隣住民への聞き込み、忘れるな」  聞き込みに行く直前、俺はあるものをポケットから取り出した。ネット通販で買ったICレコーダーだ。
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