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#1
久々に雨の降ったその日、幡ヶ谷は大学時代の同級生、清水蒼甫に会うために群馬県某所へ向かっていた。蒼甫は名家の子息で、父親の誕生日には盛大にパーティーを開くのだ。幡ヶ谷も毎年招待されており、2人でワイングラス片手に時事問題や小説について語り合っている。学生時代、最も話が合うのがこの蒼甫だった。
駅に着くと、蒼甫が傘を2本持って待っていた。改札越しに目で挨拶する。彼等は大きく手を振ったりはしない。そもそも2人とももう30代。やっていたら恥ずかしいか。
「よく来たな」
「毎年ありがとう。お父様は?」
「ああ、まだまだ元気だよ。あ、タクシーで行こう」
駅前に停まっているタクシーに乗り込み、清水家へ向かう。
車中2人は最近の仕事の話をしていた。友人は新聞社に勤務している。1年の殆どを東京で過ごしているらしい。
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