PROLOGUE

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 住人からの相談があり、大家の久石邦夫が鍵を持ってとある部屋にやって来た。部屋の前では相談をした住人、木下美鈴が待っていた。 「ここですか」 「ええ」  インターホンを鳴らしてみるが、中から返事は無い。鍵を差し込み、扉を開ける。その瞬間、鼻を突くような異臭が一気に漏れ出てきた。思わず2人は鼻を押さえた。嫌な予感がする。美鈴を外で待たせて、大家が中に入った。 「日村さん? 大丈夫ですか?」  全ての電力がオフになっている。つければ前進するのは幾分楽になるだろうが、久石の本能が「つけてはならない」と叫んでいた。代わりに、ポケットにしまっておいた懐中電灯を取り出して足下を照らす。  短い廊下の先に扉がある。どうやらそこも電気はついていないようだ。ドアの下には隙間があるのだが、そこからは光が漏れていない。  開けるのが怖かった。しかし自分は大家だ。このまま帰る訳にはいかない。事実を確認せねば。 「日村さん?」  ドアを開けると臭いが更に強くなった。これはまずい。手探りでスイッチを探し、それらを押して電気をつける。するとそこに、先程まで見えなかったものが現れた。久石は思わず悲鳴を上げた。  部屋の中央に、人が浮いていた。首にロープを括りつけて……。
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