PROLOGUE

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「じゃあね」 「うん、またね」  友人と別れ、高校2年生の久保田由衣は1人で駅に向かって歩いていた。時刻は午後5時。部活で遅れてしまうのだが、夏を過ぎるとやはりこの時間帯は不気味だ。暗くなるのが早いし、人もあまりいない。携帯で親にメールを送りつつ、周囲を見回して警戒する。  この小道を抜ければ駅に着く。駅に行けば人も沢山いる。やや駆け足で道を真っすぐ進んでゆくと、徐々に町の明かりが見えて来た。周辺では最も大きいビルの看板が光っているのが見えて来たあたりで、それは起こった。  突然、後頭部に激しい痛みを覚えた。何かがぶつかった衝撃と、その後暫く続く痛みの振動。頭を押さえて振り返ると、そこには顔をサングラスとマスクで隠し、更にキャップ帽を被った人間が立っていた。慎重は由衣より少しだけ高い。おおよそ160センチといったところか。何よりも目を引くのは、その人物の髪の毛だ。ライトに照らされた長い髪は派手なピンク色をしているのだ。  姿を見られると、相手は手に持っていた何かでもう2、3発頭と身体を殴った。部活で身体はある程度鍛えている筈なのだが、打たれた箇所が悪く、意識が薄れてきた。  男がもう1発食らわせようと、手に持っていたそれを振り上げた。次に受けたら死んでしまうかもしれない。身の危険を感じるのだが、ダメージが大きくて身体を動かせない。  物体が振り下ろされようとする、ちょうどそのとき、 「おい、何やってるんだ?」  駅の側から来たサラリーマン風の男性が見つけてくれた。ピンク頭の人物は男性と由衣を交互に睨みつけた後、その場から走り去った。 「君、君、大丈夫か?」 「は、はい……」  身体の痛みと安心感とでドッと力が抜け、由衣は遂に気を失ってしまった。  男性は非常事態だと判断し、携帯で救急車を呼び、警察に通報した。
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