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「え、えっと、あの笹飾り…明日からどうするんですか?」
先生の眼差しに気恥ずかしさを覚えて、咄嗟に教室の端に飾られた笹に指を差す。
「七夕は過ぎても飾っておくよ。八月にウチの学校分として商店街に持っていくからその間までは。となると皆が来る二学期には無くなってるな」
そう言って先生はプリントを教卓に置いて、今度は無数にぶら下がった短冊の一つをつまんだ。
そっか。七夕まつりに飾られるんだ。
来月市内の商店街を中心に開催されるのは、何十年もの歴史がある七夕まつり。
市民参加型がモットーで、地元の商店や企業はもちろん幼稚園や保育園、小・中・高が加わっての大きな笹飾りの展示や盛大なパレードが開かれたりする。
短冊にはこの夏が最後の大会になる部活動への意気込みや、異性への切実な願いや大富豪を望んでいたりとバラエティ豊かに綴られている。
「高城は何をお願いしたの?」
「…無事に、進学できますように、って」
「はは。高城次第でもあるけど、本来の七夕の願い事は勉学に限るっていうから、それなら織姫と彦星もきいてくれるかもな」
少し躊躇いながら答えた私を、先生は一度周囲を見回してから「おいで」と手招いた。
頷いて、三歩前へ出る。
胸の高鳴りを覚えながら顔を上げた瞬間、背後に回された腕にぐっと腰を引き寄せられた。
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