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 翌日、俺は都内の撮影スタジオに足を運んだ。先日安城家にアポを取り、どうにか聞き込みの時間を作ってもらうことに成功したのだ。今日は安城家のお嬢様がデザインしたドレスの撮影だそうだ。  幡ヶ谷はまだ来ていない。先程メールが届いて、少し遅れると言ってきた。聞き込みをしたいと言ってきたのは向こうの方だ。その当人が遅れるようでは……。ただ、メールには「良案を思いついた」と書いてあったので、その準備で遅れているのかもしれない。だったらその内容も教えてもらいたいものだが。  まぁ良い。こちらはこちらで、先に始めるとしよう。入り口の警備員に事情を説明して中に入り、目的の部屋に向かう。部屋はすぐに見つかった。扉の真横に大きな紙が貼ってあった。 「いいねぇ! じゃあ今度は……よっ! いいねぇ!」  カメラマンの陽気な声が部屋中に響き渡る。ドラマの世界だけではなかったのか。向かい側では赤いドレスを着たモデルが、黒いセットの上で様々なポーズをとっている。そしてそんな撮影の様子を、奥のパイプ椅子に腰掛けて安城陽子が見つめていた。長髪にサングラス、真っ赤なジャケット。派手な女性である。
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