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「ありがとうございました。それでは、次は是非ご本人から色々と窺いたいですね」
「ええ、安城にも伝えておきます」
「どうも」
聞き込みを終えると、幡ヶ谷は男を連れて俺に近づいた。そして耳元でひと言、
「ここでは繋がりがバレる。外で話そう」
と言って、男とともに先に出て行ってしまった。俺も慌ててその跡を追った。
入り口付近で、幡ヶ谷が男性と話をしながら待っている。そこに合流すると、友人はやっと作戦のことを話してくれた。
「突然浮かんだもので、君に連絡するのが面倒臭かった。こちらは清水蒼甫君、大学時代の友人で、現在は出版社に勤めている」
「どうも」
清水蒼甫。どこかで聞いたことのある名だ。だがよく思い出せない。
警察として俺と一緒に行くことも考えたようだが、後の家宅捜索、それから俺の聞き込みの要領などを考慮に入れ、全く別の職業の人間に成り済ますのが良いと考えたらしい。そこで彼が囮として白羽の矢を立てたのがこの清水だ。彼は出版社の人間だから雑誌の取材だと言っても疑われることはない。
「それに、安城陽子はかなり偏屈な人間だと聞いていた。君は予習をしっかりして来ない人間だ。きっと彼女に正面から挑むだろうと踏んでいたから、僕達は彼女の付き人、スタッフから始めることに決めたんだ」
「なるほどな。悔しいがお前の勘は当たってるよ。それより良いのか? この志水さんにだって仕事があったんじゃないのか?」
「いえいえ。僕も安城家は前からマークしてましたから。色々と良い話が聞けましたよ」
そうか、安城家は疑惑の家系。メディアの格好のネタというわけだ。
「それにしても、本当に刑事の友人がいたんだなぁ。てっきり冗談かと思ったけど、本当に捜査協力をしてるんだなぁ」
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