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 セレブ・安城陽子の素顔が次々と明らかになってゆく。しかし、陽子が父親と不仲であったこととシェフの小西にどんな繋がりがあるのだろうか。陽子が殺人を犯したという話なら有り得なくもないが、小西はこれらの話の中に1度も登場していない。  幡ヶ谷にはもうある程度の形は見えているようだ。先程からずっと笑みを浮かべている。 「おい、さっきから何笑ってんだよ?」 「君にはわからないか? この事件の構造が」 「わからないね。俺はお前と違って、ここの出来が悪いからね」 「知能の善し悪しなど関係無い。誰でも気づける筈だ」 「誰でもって……」  俺は色々な案を考えてみたがどれも無理矢理な出来で自分でも納得がいかない。  悩んでいると向こうの方から手を差し伸べてきた。 「君は勘が鋭くなったり鈍くなったり、激しい知能の持ち主だな」 「うるせぇ。早く教えろ」 「これはまだ推測の域を出ないが、陽子が小西に父親の殺害を命令したとしたらどうだろう?」  俺は目を見開いた。  今まで何故そんな単純なことに気づけなかったのだろう。自分が情けなく思えてきた。確かに安城陽子ならそれぐらいのことはやりかねない。己の名声を守る為に他人を利用して殺害させる。そうすれば小西がうっかり喋らない限り事件のことは世間には広まらない。  また、安城武史氏は3年前から体調を崩しており、会合等は全てテレビ電話を利用していたという。これは幡ヶ谷が清水から聞いた情報だ。だから公に顔を見せないようになっても怪しむ者は誰も居ない。ほぼ完璧な犯罪計画だ。だから小西が最後に遺した自供文は想定外だったろう。飼い犬に手を噛まれるとはまさにこのこと。あの遺書のせいで俺達が動きだし、陽子の名声も危うくなってきた。 「ま、これはまだ僕の推測に過ぎない。それを実証する為の情報はまだ足りない。遺体か凶器。どちらかが見つかればまた違うのだが」 「ああ、確かにな」  ちょうどそこへ、幡ヶ谷が頼んだステーキが届いた。
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