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#2
ところが翌日、事態は急変した。小西に殺しの疑いが出て来たのだ。
彼の靴の中から見つかった遺書。そこに彼が自殺を決めた原因が書かれていた。文面には、『私は罪を犯した。重い重い罪を。この死で償えるとは思っていないが、私はもう包丁を握れない』とあった。重い罪というのは、単純だが殺人を意味しているのだろうと考えられる。包丁を握れないというのも、これまた勝手な憶測だが、その凶器で誰かを刺し殺した、ということなのではないか。
「でも、どうせなら何をしたのか詳しく書いてくれれば良かったのにな」
と坂口が呟いた。この男、昨夜から発言がブラックだ。見ると目の下には隈が。疲れが溜まっているらしい。
彼の言っていることは確かに頷ける。こういう場合、普通は誰を殺したのか、何故殺したのかも書くのではなかろうか。小西が残した手紙にはそういったことは何も書かれていなかった。本当に、あの43文字の文章しか遺されていなかったのだ。
自身の罪を世間に知らしめたかった? いや、だったらこんな曖昧な文は遺すまい。では誰か別の人間が彼を殺して罪をなすりつけたのか? 昨日は雨が降っていたから、他人の足跡や指紋が洗い流されていることも考えられる。真犯人が、自身の犯行を知らしめるために罪を犯したとも考えられるが、それだと小西に罪をなすり付けた理由がわからない。
「どうするよ? どうやって調べる?」
「そうだな……まずは、小西が通ってた家からあたった方が良いかもな」
「へぇ。何だお前、探偵みたいだな」
言いながら同僚が指で俺をつっつく。
アイツと一緒に捜査をしていたためか、俺もそこそこ推理が出来るようになっていた。しかし、これをアイツの前で口に出せば即否定されるだろう。「そういう油断が誤認逮捕を招く」みたいなことを言われるのだろう。勝手に想像して深いため息をついた。
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