PROLOGUE

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PROLOGUE

 もう、耐えられない。  私は大きな罪を犯した。非人道的な行為だ。  何故あんなことをしてしまったのだろう。まともに考えればあのとき拒否出来た筈だ。それなのに、何故あんなことを。  死ぬしか無い。それ以外に、罪を償う方法は無い。  自殺に対して否定的な考えを持った人間はよくいるが、私の罪状を聞いても、そう言っていられるだろうか。彼等は私に「考え直せ」「まだやり直せる」と言えるだろうか。  誰に言われようが、私の心は変わらない。もう決めたのだ。私は今夜、死ぬ。  ……ああ、うるさい。  下では店から出てきた酔っぱらいが、大して美味くもない料理の話をして盛り上がっている。彼等は本物の料理の味を知らない。まぁ、その本物というのも、私の妄想に過ぎないのかもしれないが。  これから私は死ぬ。だが、最後にもう1つ、傷跡を残してやろう。私とてプロと呼ばれた者の1人。プライドがある。私のプライドを守るために、この世にもう1つ、傷をつけてやるのだ。 「……さようなら」  私は目を瞑って、ビルの上から飛び降りた。
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