PROLOGUE

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 雨の降る夜。  木村隆俊は友人宅にやって来た。突然のことだったので服を着替える余裕も無く、部屋着の上からお気に入りの黒いジャンパーを羽織ってアパートを飛び出した。  15分前、彼の携帯に1通のメールが届いた。相手は大学で知り合った友人の三好由美。それまではお互い1人きりで過ごしていたのだが、数ヶ月前に知り合って以来一緒に遊ぶようになった。  メールにはただひと言、「これから死にます」とだけ書かれていた。普段なら絵文字やら顔文字やらを入れてくるのだが、今回は何も添えられていなかった。妙な胸騒ぎを覚えた隆俊は財布だけ持って慌てて外に出た。由美の家には行ったことがあるのだが、隆俊の家からだと時間がかかる。早く着くにはタクシーを拾わなければならない。幸いタクシーはすぐに見つかったが、土砂降りだったために彼の服はすぐにびしょ濡れになってしまった。  アパートの2階、1番奥が由美の部屋だ。慌てて階段を駆け上がり、奥の部屋を目指す。
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