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間もなく俺は疋田から解放された。そして俺をじっと睨むと、「ヤツが犯人だ」と言ってトイレの方に向かって行った。あの様子ではまだ諦めていないようだ。
「あーあ、お前何やってんだよ」
と、坂口が後から出てきた。物陰から様子を窺っていたらしい。
「もっと考えてから行動しろよな」
「だって、どう考えてもマズいだろ」
「お前もな。疋田さんを敵に回してどうすんだよ? あの人と仲が悪くなってここから出て行ったヤツが何人いたよ? 後々面倒だぞ」
坂口の言う通り、疋田と関係が悪化して左遷、辞職した刑事は何人もいる。俺の同僚も1人辞めていった。今は実家の畑で手伝いをしているとか。
俺もそうなるかもしれない。俺の場合はニートか。だがそれでも、今疋田が行っている非人道的な行為を見逃すわけにはいかない。
「事件を解決すれば良いんだろ」
昨晩の俺の行為は無駄ではなかった。もしかしたらこのために誰かが俺にそうさせたのかもしれない。
事件の真相を暴けば疋田も黙る筈。しかし、俺1人の力だけでは解決するのは難しいだろう。馬鹿なのは自分でも重々承知している。となれば頼るべきはやはりあの男。俺の次の行動が決まった。これまで数々の事件を解決に導いた偏屈な同級生、幡ヶ谷康介に会いに行くのだ。
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