PROLOGUE

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 寒さに震える指でインターホンを押す。が、すぐには出ない。何度も何度も押すがやはり返事は無い。不安が増してゆく。それならばと隆俊は錆びたドアノブに手をかけた。現実はドラマとは違う。しかし、少しでも望みがあるのなら、彼はそれに賭けたかった。  手に力を込めてノブを左に回すと、ドアが少しだけ開いた。まだ間に合う。勢い良くドアを開けて中に入ろうとした、次の瞬間、何かが真正面から隆俊の方へ倒れてきた。慌てていたため足を滑らせ、隆俊はその物体もろとも倒れてしまった。頭を強く打って小さな悲鳴を上げる。  身体の上に乗る物体。重みはあるが硬くはない。頭を打った痛みで目をすぐに開けられない。手探りでそれが何かを考える。若干柔らかい質感。何か紐の様な物が巻き付いているらしい。痛みが引いたところで、彼はゆっくりと目を開ける。  身体が圧迫されているからか、驚きすぎたからなのか、悲鳴も何も出なかった。  彼が最初に視界に捉えたのは、目を大きく見開いた由美の顔面だった。
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