君へ

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「君へ」 汚してはいけない 踏み込んではいけない 立ち入り禁止の立て札の 向こうに微笑む そよかぜの君 あたたかい光のように ふやけたバターのように 眩しい笑みが そっと そっと 染み込んでくる 気がしていた だけどどうしたって 近づけないなあ 靴の脱げない僕は 立て看板を引っこ抜いたあとで 土まみれのまま このまま君の芝生を 汚してしまうよ 立ち入り禁止の立て看板は どろんこな僕には何も 踏み込む術がもてないと ただそこで冷たく笑っている それなのに君は どうしてこうも眩しいのだろう 君を汚すと知りながら 一歩を踏み出した僕を君は どんな顔をして 見つめるだろうか 君を汚すと知りながら 一歩を踏み出した 僕を僕は どんな手をして 戒めるだろうか
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