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とはいえ、大人にとってはどうでもいいような些細なことを熱心に聞かされるのはわずらわしかったから、勇樹もそれ以上は気にするのをやめ、それよりもこの後の集会に気をもんでいた。
昨夜の戦いで負った怪我はたいしたものではなかったが、またヘマをしてしまったと気分が晴れなかった。
十八歳のときから参加しだしてもう二十六年になる。先祖から受け継がれた血は勇樹の体にも流れているが、発揮できる魔力は他の誰よりも弱く、月神獣との戦いではいつも十分な働きができなかった。それでも若い時分は体力でカバーできた。しかし四十の声をきく頃になるとボロが目立ちだした。
もともと向いていないのだ、月神獣と戦うなんて野蛮なことは――。
しかし義務は果たさなければならなかった。それがこの月野町商店街に生まれた者のさだめなのだ。向いていようがいまいが。
「アナタ、そろそろ時間じゃないの?」
直美の声に勇樹は考え事を中断する。
「ああ、そうだな」
勇樹は、壁にかけられた、理沙の出産祝いにもらった装飾過多の時計に目をやる。食事はすでに終わっていた。ふっと息をつき、湯呑みに残っていたお茶を飲み干すと席を立った。
月野町商店街の外れには住民用の集会所が建っていた。十五年ほど前に、それまで使われていた老朽化の激しい木造小屋を倒して建てたプレハブだった。
開け放った玄関を入ると、もうすでに何人か来ていた。大勢の人が出入りできやすいよう広めに作られたたたきで靴を脱ぐと、小学校を思わせる何段にもなった横に長い下駄箱の隅のほうに入れた。
ガラス障子を開けると冷房の効いた二十畳の和室が広がっていた。
「こんばんは」
「ご苦労さん」
と、先に着ていた人が返す。勇樹は奥の隅のほうにすわった。
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