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二人が飽くことなくその様子を眺めていると、シロはやっと満腹になったのか、かなり残っているも、それ以上は食べなくなった。
食べる終わると、今度は遊ぼう、ということになる。
オモチャはいくつかもってきていた。ゲームなんかではなく、テニスボールだったり、ヨーヨーだったり、ミニカーだったり、シロといっしょに遊べそうなものばかりだった。
空腹がまぎれたのか、元気になったシロは二人の少年のもってきたオモチャとたわむれ始めた。警戒心がまったくないことで、航聖も銀次郎も夢中になってシロと遊んだ。
シロの体は手で持てるほど小さいからいっしょに走り回ったりはできないけれど、子猫やインコのようにじゃれていつまでも飽きなかった。
気がつくと時計は五時をまわっていた。二人とも昼ごはんすら食べていない。それでも気にならないぐらい、この異界の動物に心を奪われていた。
「あしたも来ようぜ」
七時になろうとするころ、銀次郎が言った。
「うん、あしたもな」
と、うなずく航聖。
「おれ、もっとちゃんとした秘密基地にしたいから板きれを持ってくるよ。運ぶの手伝ってくれよ」
「うん、わかった」
「朝、九時ごろ、おれの家に来てくれ」
「板きれって……たくさんあるのかい?」
「近くに木工所があるんだ。そこには廃材がいっぱいあって取り放題なのさ」
銀次郎は楽しくてしかたないふうである。航聖も、その笑顔にこの先の不安などまるっきり見えなくなった。
「じゃあ、シロ、あしたまた来るから、ここでおとなしくしてるんだぞ」
そう言うと、まるで言葉がわかるかのように、シロは黙って二人を見つめた。
二人は明日のことを考えて、うきうきしながら秘密基地を出た。
たいした出来事のない退屈な田舎の夏休みに、いつもの夏とは違う、二人の少年たちだけの秘密の遊び……。それはたまらなく魅力的な輝きとなって、二人の目の前にまぶしく光っていた。
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