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見ると、細長いベニヤ板や角材の切れ端や四角くない厚板とかが無造作に積まれて廃棄されるのを待っていた。
「ありがと」
ぺこっと頭を下げると、「行こうぜ」と銀次郎は一目散に廃材置き場へと駆ける。
航聖は犬のように銀次郎についていく。
銀次郎は散らかるのもかまわず、秘密基地用の建材に使えそうなものを検分する。いくら廃材とはいえ、もとは製品になる材料だったから、それほど汚れてもおらず割れてもいない。少年たちにとって、それはまるで宝の山のように見えた。いくらでも持って行きたい衝動にかられたがそうもいかず、自転車で運べるだけの板材を厳選した。
バランスが悪くなってふらつきながら自転車をこいで木工所を後にすると、シロの待つ秘密基地へとたどりついたときにはもう陽はだいぶ高くなっていた。
秘密基地の改築は後にして、まずはお腹をすかせたシロ(昨日食べ残した分の魔草はもうなかった)のために魔草を刈ってくる。
二人して頂上まで登り、鎌で魔草を刈り取った。十分な量を刈り取ると秘密基地にとって返し、シロに与える。シロが魔草を食むのを見てから、今度は運んできた板きれで秘密基地の改修に取り組んだ。ノコギリでさらに成形し、釘で打ちつけて、不格好ながらも作業はすすんでいった。
二人とも一生懸命だった。暑いなかでの労働でも、少年たちにとっては「遊び」だったから真剣に取り組めた。
やがて完成した。なんの経験もない子供が作ったわけであるから、荒っぽい出来栄えだったが、少年たちはそれで納得した。
組み上がった秘密基地のなかで、持ってきた弁当を食べていると、シロがなんだか物欲しそうな顔をする。
「そんなもの食べさせたら病気になるんじゃない?」
サンドイッチをかじっていた航聖が制すると、つまんでいたベーコンをシロに与えようとしていた銀次郎はそのベーコンをしばし眺め、
「じゃ、これならいけるかも」
と、今度はキャベツの千切りを箸でつまみ上げた。
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