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人間が食べるような味のついた食べ物でないなら大丈夫な気がした。
試しにシロの前に置いてみた。
シロはくんくんと匂いをかぐと、千切りキャベツに食いついた。もしゃもしゃと咀嚼する様子はなんとも形容しがたい可愛らしさだ。
おいしかったのか、シロは立ち上がり、もっと欲しそうに銀次郎の膝元へとよってくる。
「そうかそうか、おまえ、キャベツが好きか!」
キャベツがあまり好きではなかった銀次郎は大喜びしてシロにキャベツを全部あげた。
「魔草がだんだん少なくなってきたから心配だったけど――」
航聖も思わぬ発見にホッとした表情を浮かべた。山の頂上にはまだまだ魔草が生えていたが、こうやって毎日のように刈り取っていたらいつかなくなってしまうだろう。が、キャベツなら簡単に手に入る。
「そうだ、あした、農協の朝市で買ってこよう」
すると、銀次郎は次々と思いついて、早口でまくし立てた。
「互いにお金を出し合ってさ。百円あれば買えるだろうし、それなら小遣いでなんとかなるじゃん」
「……そうだね。うん。そうしよう」
さすがに家の冷蔵庫から持ってくるわけにもいかない。航聖は貯金箱にいくら入っていたかなと思い出そうとして、あんまり入ってなかったな、と思う。なにに使ったのかさえよく覚えていない。
弁当を食べ終えると、やっと遊びの時間である。
すっかり慣れたシロも、二人と遊ぶのが楽しいらしく、じゃれあったりするようになった。その様子は子犬や子猫と変わりないように見えたが、こんなにも小さいのに木に登ったかと思えばさっと飛び降りるところは、ただの犬猫の子とは違う身のこなしだった。
航聖も銀次郎もそんなシロとの時間が楽しくてしかたがなかった。こうして、二人にとって充実した時間が過ぎていくのだった。
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