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全員が全力をあげて戦っていた。しかし、誰の能力も平等とはいかず、自然、包囲の弱い方が崩れだした。
「またあいつのところか……! 鳥野さん、しっかり防いで!」
「わかってる!」
怒鳴り返したものの、言うは易しで、体は若い頃のような切れがなく思う通りに動かない。かといってベテランらしい戦いのリズムもつかめず、鳥野と呼ばれた男は苦戦していた。
妖術も心細く、魔物にダメージを与えるまでには至らない。タイミングを計って槍をふるうも、どうにも腰がひけてしまっていた。
鳥野と対峙していた魔物が後ろから斬り倒された。一刀両断。悲鳴をあげて、絶命する魔物。
それが最後の一頭だった。
合戦場が静かになった。戦いが終わったのである。周囲には、魔物たちの死体がかがり火に照らされて、うち捨てられていた。人間側の大勝利である。
鳥野は大きく息をつく。そのとき初めて左腕に痛みを感じた。魔物に噛みつかれた歯形が深く残されていた。
顔をしかめていると、
「鳥野さん、怪我したんですか?」
年の頃は鳥野と同じぐらいの男が近づいて言った。その口調には、気遣っているというより、軽く蔑みが含まれていた。
「いったいいつになったら、ちゃんと我々の戦力になるんですか」
と、鳥野よりも年上の、別の男が加わった。
「若い衆に示しがつかないぜ」
それに対し、鳥野は返す言葉がない。魔物と戦う宿命を持って生まれたものの、生まれもった能力の優劣は如何ともし難く、ただ唇を噛むしかなかった。
「さぁさ、みんな!」
皆の長である男が大声で呼びかける。一同が振り向くと、
「勝ち鬨を上げようぞ! エイエイオー!」
「エイエイオー!」
戦国時代さながらに、人間たちが拳を振り上げ鬨の声をあげた。
なにもかもが、数百年過去と同じであった……。しかし、今は紛れもなく、二十一世紀なのである。毎月、満月の夜にこんな戦いがおこなわれていても……。
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