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こんなに小さいのなら、もしかしたら平気なのかも、と猛獣であるライオンやトラでさえも、赤ちゃんのときは可愛くてそれほど危険ではないという知識があるため――というのもあった。
月神獣は、銀次郎の指先をしばらく見つめたあと、ぺろぺろと遠慮がちに舐めはじめた。
これには航聖も驚かざるを得なかった。
銀次郎は気を良くして、調子に乗って口走る。
「なあ、航聖、こいつペットにできないかな?」
「それはまずいよ!」
航聖は、銀次郎の提案に瞠目して、さすがに声を荒げた。
月神獣は秘密の存在であるのに、こともあろうに飼おうなどと――。しかも成長した月神獣と人間とは敵対関係にあるのだ。その外見がどんなに無害に見えようとも、人類に害を及ぼす存在なのである。
「それに、親が捜しているかもしれない」
子を取られたと思った親が現れたら、きっと想像もできないほどの凶暴性を発揮するにちがいないのだ。
航聖はそれが大人たちへのとんでもない迷惑になるんじゃないかと心配になった。
「でもさっきの航聖の話だと、親はきっと戦いで殺されているよ」
航聖の説明を半分も理解できていないのではないかと疑っていたが、銀次郎はしっかり聞いていたようである。
たしかに、銀次郎の言うのも、可能性としてはあり得た。
こんなところに、こどもの月神獣がいること自体、不自然だった。親のあとを追って来たが、親が殺されてしまい、帰れなくなって、そのうち疲れて眠ってしまった……。
そういうシナリオがいちばんしっくりきた。
「そういうことなら……」
航聖はそう口にすると、そう信じたくなり、そうにちがいないと思えた。
「でも、家へ連れて帰るのは、やっぱりまずいよ」
さすがにそこは躊躇した。
いくら可愛くても大人たちにとっては脅威の的だから、もし見つかったりしたら大騒ぎになるのは明らかだ。
「うーん」
航聖は思案顔で腕組みする。
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