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私達は再び炎天下の歩道に出た。
アイスを食べ終わるまでは歩けと兄に言われ、仕方なく私は歩き出した。ここまで来ればもう置いていかれる心配は無い。こんなところで小学三年生の弟を置いてきぼりにしたら後で母からこっぴどく叱られることを兄は知っていたし、兄がそれを知っていることを私は知っていた。
真夏の凶暴な太陽が容赦なく私を照り焼きにする。
アイスでも食べていなければやってられない。
「ヘタだったな」
私の歩く速度に合わせてゆっくりと自転車をこぎながら兄が話しかけてくる。
「あいつら?」
「うん。初心者だな」
「かもね」
私は曖昧に返事をした。
磯子区森の友達連中と行く駄菓子屋にも埃の付いたピンボールが一台置いてあったが、私はほとんどやったことがなかった。
上手いとかヘタとか言われてもよくわからない。
アイスを食べ終わり私は再び荷台に乗った。少し速度を上げて自転車が走り出す。
「上大岡のどこ?」
私はここで初めて本当の目的地を聞いた。
「ゲームセンター」
兄が答える。
「ふうん」
適当に返事をしたが、実はゲームセンターなるものがよくわかっていない。
ゲームならいつもの駄菓子屋でやればいいのにと思う。
関の下の交差点を右折したところで私は荷台から降りた。
さすがにちょっと兄に悪いと思ったのもあるが、鎌倉街道に入って片側二車線になり、急に車の量が増えたからだ。
兄は一人乗りになると速度を上げた。
私は歩道を走って追いかけた。どうせもう上大岡は目前だ。
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