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 七階でエレベーターを降りると、ごろごろがっしゃん、というボウリング場特有の音が聞こえてきた。  レーン数がどれくらいなのか数えてないのでわからないが、とにかくやたらと広い。  端から端まで駆けっこをしたら余裕で10秒以上掛かりそうである。  床面積的には他の階と同じはずなのに何故かボウリング場が広く感じるのは、余計なものが無いからか。  ボウリングのレーンから3㍍ほどの所までは光沢のある木の床で、一段高くなっている。  段下は白いリノリウムが敷き詰められ、ボウラーが休んだり順番待ちをするための固定椅子が2レーンに八個ほど設置されている。  椅子の後ろに三段の棚があり、ボウリングの球がずらりと並んでいる。  上段がピンクの球で中下段が黒い球。重さによって色分けがされているのだ。  夏休みということもあり、結構混んでいる。  中山律子が「さわやか律子さん」だった頃だから、ボウリングの黄金期と言っても良い。  勿論私達はボウリングなんてやる気は更々無く、正面の受付を無視して一直線にピンボールへと向かう。  ピンボールが有るのはボウリングのレーンとは反対側の壁際であった。  兄はゲームセンターと言ったが、正確にはゲームセンターではなくゲームコーナーである。  この頃まだゲームセンターと言えるものは非常に少なく、デパートの屋上やボーリング場の空きスペースに数台のピンボールその他のゲームが置かれている場合が多かった。
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