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一時間ほど掛けてビッグレースを五回やったところで、上達したところを兄に見せたくなった。
が、兄の姿が見えない。トイレかな? そう思いながらフロアをうろうろしていると、突然後ろから声を掛けられた。
「おまえ、金いくら持ってる?」
そう声を掛けてきたのは、クロンダイクをやっていた中学生三人組の中の一人だった。
学生ズボンに白いTシャツ。頭はスポーツ刈りで中学生にしては背が高い。
ヤバイ、と思った。
カツアゲってやつだ。
向こうは中学生で仲間も二人居る。どう考えたって勝ち目が無い。
真っ青になっている私を見て相手が苦笑いをした。
「なぁ、あのゲーム買わないか?」
買わないかって、おまえのゲームじゃないだろ?
勿論、口に出して言ったわけじゃない。情けないけど怖くて口が利けなかった。
「ちょっと来いよ」
私は無理矢理クロンダイクの前に連れて行かれた。
「300円持ってるか?」
私を引っ張ってきたノッポが聞いてくる。
即座に首を横に振った。
本当は300円以上持っていたが、こういう時は持ってないと言い張るしかない。
「18ゲームで300円。安いよ?」
穏やかな声でそう言ったのは、ノッポの隣に居たアロハシャツだ。
背はそれ程高くないが、パーマをかけていて、ノッポよりお洒落で知的な感じがする。
彼の言う”18ゲーム”というのが良くわからなかったが、とにかく怖くて私は震えながら首を振った。
「ハセガワくん、やっぱこんなチビじゃ無理だよ」
ノッポがアロハシャツに言う。どうやらアロハシャツはハセガワという名前らしい。
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