プロローグ

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他の人に抱かれながら思い出すのは貴方の事。 不器用で嘘が下手で。 笑ったら見える八重歯が可愛いって言うと顔を真っ赤にして怒って。 逞しい腕が何度も私を抱き寄せては「好きだ」と言った。 私たちはずっとこうして大人になって、そしてずっと一緒だと思っていた。 でもそれは一瞬で崩れた。 何度も名前を呼んだ。なのに、貴方は私の名前を呼んでくれなかった。 どんなに泣いても、もう届かない。 貴方の瞳に私は写っていたのかな。 ねぇ、満月が欠けていく。 「迎えに来て...なんてもう言っちゃいけないのかな」 果てて眠る男の横で 私は今夜も月を眺める
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