家政婦?召使い?

13/13
前へ
/40ページ
次へ
「ここにはお一人で?」 「妻がいたけど、出ていってしまったよ」     嘲笑気味で言う大志。 私は天井を見上げ、 「寂しいですか?」 「キミが来てくれてずいぶん騒がしくなったな」 「静かなほうがよかったかもしれませんね」 「ただいまと言える家のほうがいい」     大志は寂しそうに目を伏せた。 あぁ……この人、寂しいんだ。 言葉の端々からそう訴えている気がする。 なんか意外だな。 人間らしい一面に触れて少し安心する。 「それは同感ですね」 大志の口角が上がる。 「……自分の居場所(いえ)を探してみたくなったんです」 「え?」 「おやすみなさい」     私は少し笑みを見せて、部屋を出ていく。 「なるほど」     大志はボソッとつぶやく。   *   *   *   * キッチンへと戻り、一息つく。 けれど、キッチンはまだ荒れていて、 リビングも無理やり片付けましたと言わんばかりの出来上がり。 まだまだ綺麗とは程遠く、私はどっと疲れが出る。 と、テーブルの上に黒い分厚い手帳が置いてあるのに気づく。 私は何気に手に取り、中身を拝見してしまう。 手帳にはものすごくビッシリ細かくスケジュールやメモが書かれていた。 ーーすごい。うちのハゲ社長とは大違いだ。 私は少し申し訳ない気持ちになる。 社長なんて皆、裸の王様で、いやらしくて、理不尽な人ばかりだと思ってたから。 と、ダイニングテーブルの端の椅子に買い物袋がそっと置いてあるのに気づく。 なんだろうと開けてみると、中には消毒液と新品の絆創膏が入っていた。 私は自分の指に巻かれたすでにボロボロになった絆創膏を見つめる。 ーーでも……。あの人は……。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

115人が本棚に入れています
本棚に追加