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僕の体は勝手に動いていて、高橋君のソファのそばで膝立ちして彼の顔を覗いた。
うっすらと開かれた唇に僕は欲情したのか徐々に彼の唇に自分の唇を重ねようとした。
そう、重ねようとしたのだけれど。
「どうしたの?」
ニヤリと微笑む高橋君は僕の行動の意味を分かっているんだろう。
「なんでもないよ…それより皆帰っちゃったよ。」
僕は高橋君から離れて麦茶の入ったコップを手に取りゴクリと飲む。
「ルイさんは待っててくれたの?」
「…え?や、ただ仕事が終わらなかっただけで…」
「ルイさんの嘘つき。今日の分は終わってるよね?」
高橋君が立ち上がって僕の机にある書類を見つめてそういった。
「……」
そう、実は今日終わらせる分はとっくに終わっていた。
「先に帰ってても良かったのに。」
さらりと言ったその言葉に僕は俯く。
”一緒に帰りたかった”と言えない僕はやっぱり男らしくない。
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