兎と猫 そして神様

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帰ると言ったものの、幻想郷に来てから一ヶ月近く経っているのに、未だに自分の家を持っていない。 ボロくてもいいから自分の家が欲しくなってきたな。半月ほど紫の家でゴロゴロして、後は幻想郷のあちこちをうろついてきたけれど、ひとりでゆっくり休める場所が欲しい。 「美月さん美月さん、どうしましょう?」 「ん?そうだな…」 自分の家を持つのなら、どこに住むのがいいかな。 一番手っ取り早いのは人里で空き家を見つけることだけど、それは色々な理由で却下。紫の家の近くに建てるのも、何か面倒な条件をつけてきそうだから却下。人が少ないから静かそうではあるんだけどね。 うーん…地底なんでどうだろう。まだ行ったことがないから詳しくは知らないけど、地上の妖怪が入れないんだよね?もし紫も入ってこれなかったら、仕事を押し付けられないから楽ができるね。そのうち時間ができたら行ってみようかな。 ところで、さっきから橙に見つめられてるんだけど…なに? 「どうしたの?私の顔に何か付いてる?」 「違います!美月さんもこれからどうするか考えてください」 考えてって言われてもな…考えるのも面倒だよね。 「橙は何か思いつかないの?毎年この時期にやる仕事とかない?」 「毎年この時期に…何も思いつかないです」 まあ、そんな簡単にはいかないか。なんだか無性に家が欲しくなってきたから、さっさと仕事を終わらせるために頑張ろうかな。 …私が頑張ったら大体失敗するんだけどね。 「どうしましょう…」 ん? 「どうしてかわかりませんが藍しゃまと連絡が取れません。このままだと本当に帰れないですよ…」 橙は藍の式だから念じると連絡ができるらしい。私も一応紫の式ということになっているけれど、私の場合は少し特殊だから連絡は取れない。紫と連絡は取りたくないから構わないんだけど。 それはさて置き… 「橙の家ってこのあたりにある猫の里って場所じゃなかったっけ?違ったかな?」 「う、うるさいです!いつも私のこと馬鹿にして…」 馬鹿にしたつもりはないんだけどな。 「紫しゃまの屋敷に住めているからって!八雲を名乗れるからって!美月さんはいつも私を馬鹿にします!」 ちょ、本気で怒ってる。そんな怒られること言ったっけ?全然心当たり無いんだけど。 これはさすがの私も焦る。えっと、とりあえず落ち着いてもらおう。
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