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その日、珍しく父さんと母さんが揃って幼稚園に迎えに来てくれた。
家から徒歩で10分ほどの距離、僕たちは家に向かって歩いていた。
僕の右手には父さんの左手、左手には母さんの右手。2人の大きな手に包まれ、僕の頬は弛みっぱなしだった。
テンションが上がれば普段しない自慢話だってしたくなる。
「ねぇねぇ、僕ね!今日、因数分解が出来るようになったんだよ!!」
その言葉に父さんがわかりやすく驚いてくれた。
僕は同年代の友達と比べても異常なほど頭が良く、大人たちはそんな僕に驚き、そして褒めてくれた。
「す、凄いじゃないか!父さんなんて、掛け算や割り算だって危ういぞ。」
「ふふっ、父さんは足し算や引き算だって危ういじゃない。」
「ま…ぁ…。ぃ…いや!掛け算や引き算くらい……できる!!」
少し馬鹿な父さんや、それをキラキラした目で虐める母さんが僕は大好きだった。
「ま、まぁアレだ。今日はめでたい!蜂助の好きなハンバーグはどうだろうか母さん。」
「何がめでたいのかわからないですけど……。じゃあ、今日は蜂助の好きなハンバーグにしましょうか。」
クスクスと口に手を当てた母さんが僕を見て微笑んだ。
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