15年前

4/10
前へ
/10ページ
次へ
「あ、蜂助くん。ちょっと頼みたい事があるんだけど…。」 引き取られて1週間経った頃だろうか、勉強している僕に叔母さんが話しかけてきた。 「忙しいところごめんね?頼みたいことなんだけど、情けない話だけど家計が苦しくって…このままの状態で蜂助くんを養うのは厳しいの。だから…。」 叔母さんは一旦そこで区切り、悩む素振りを見せた後、言葉を続けた。 「ご両親の貯金を使わせて欲しいの。」 僕はしまったと思った。 子供とはいえ、1人の人間を引き取るのだ…家計を圧迫するのは目に見えている。 本来僕のほうが先に言わなきゃいけなかった。 「気付かなくてごめんなさい。今通帳と印鑑を持ってきますね。」 そう言って僕は引き取られる際に持ってきた荷物を漁った。 ----------- 「どうぞ。」 「助かるわ。ありがとう。」 叔母さんはそう言うとニコッと微笑みを向けた。 そういえば貯金はいくらあったのだろうか、通帳の中身を確認するのをすっかり忘れていた。 そんな事を思っていると、叔母さんがパラパラと通帳を開いた。 どうやら貯金額を確認しているようだ。 「へぇ…これはこれは。」 「どうかしましたか?」 「なんでもないのよ。助かるわ!ありがとうね。」 良かった…どうやら満足できるだけの残高はあったのだろう。 貯金が0でしたなんて笑えない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加