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「あ、蜂助くん。ちょっと頼みたい事があるんだけど…。」
引き取られて1週間経った頃だろうか、勉強している僕に叔母さんが話しかけてきた。
「忙しいところごめんね?頼みたいことなんだけど、情けない話だけど家計が苦しくって…このままの状態で蜂助くんを養うのは厳しいの。だから…。」
叔母さんは一旦そこで区切り、悩む素振りを見せた後、言葉を続けた。
「ご両親の貯金を使わせて欲しいの。」
僕はしまったと思った。
子供とはいえ、1人の人間を引き取るのだ…家計を圧迫するのは目に見えている。
本来僕のほうが先に言わなきゃいけなかった。
「気付かなくてごめんなさい。今通帳と印鑑を持ってきますね。」
そう言って僕は引き取られる際に持ってきた荷物を漁った。
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「どうぞ。」
「助かるわ。ありがとう。」
叔母さんはそう言うとニコッと微笑みを向けた。
そういえば貯金はいくらあったのだろうか、通帳の中身を確認するのをすっかり忘れていた。
そんな事を思っていると、叔母さんがパラパラと通帳を開いた。
どうやら貯金額を確認しているようだ。
「へぇ…これはこれは。」
「どうかしましたか?」
「なんでもないのよ。助かるわ!ありがとうね。」
良かった…どうやら満足できるだけの残高はあったのだろう。
貯金が0でしたなんて笑えない。
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