第一章

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「アリス様、起きてください」  現在、朝の七時でございます。キングサイズのベッドにはアリスが可愛らしい寝息を立てながら、穏やかに眠っている。一年前では考えられなかったことだ。 「アリス様、遅刻します」  俺は奴隷のため、アリスに触れることは禁止されている。本当はアリスに奴隷をやめてもいいと言われているのだが、それでは俺のアイデンティティがなくなってしまう。  何より、堂々とアリスの寝顔が見れない。  俺が身につけているのはアグロス魔法学園指定の制服だ。最初は断っていたのだが、アリスとエメルダに無理やり着せられたのだ。だが、首輪は外すことなくつけたままだ 「うるさいよぉ」 「朝ですよ、早くしないとエメルダ様が来てしまいます」 「うぅ、わかったぁ」  アリスは朝が弱い。起こすのも俺の仕事なのだが、なかなか骨が折れる作業だった 「顔洗ってきてください」 「はーい」  未だに寝ぼけているアリスを洗面所に送り、朝食作りを再開する。朝なので、フレンチトースト、とサラダの付け合せにした。料理も寮にいる間は俺の仕事なのだ。 「おはようジル」 「おはようございます、アリス様」  アリスが洗面所から出てきた。彼女は俺が未だに奴隷としていることをよしとしていない。それは彼女の父、大旦那様もなのだが、エメルダのおかげで大旦那様も救われ、今では親ばかを発揮するほどだ。  アリスに対してと、何故か俺に対しても。  俺が自ら頼み込み、未だに奴隷としての立場にいる。大旦那様は養子にすると言って大変だったが、ある事情を話すと、渋々ではあるが奴隷としていさせてくれた。
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