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そう言って笑顔で出て行ったお客様が鳴らしたドアベルの音が、勝利のファンファーレのように聞こえた。
「……よし、頑張ろう」
いくら自分たちのお店だからと言って良いことばかりではない。
でも、こうやってちゃんと見て評価してくれる人もいるんだってことが力になる。
そう思ったら涙腺が弛みそうになったけれど何とか堪えて、閉店までしっかり乗り切った。
「――ありがとうございます、またお越しくださいませ」
最後のお客様を送り出して、SORA珈琲店は午後7時に閉店した。
閉店時間が早いのは王子の希望。
その理由は本当に個人的なことなので、お客様に聞かれても答えに困るもの。
――俺の淹れるコーヒーを一番飲んで欲しいのは姫だから、夜は姫のためだけに淹れたい。
それって経営者的にどうなの?って思うけれど、やっぱり好きな人にそんなこと言われて嫌だなんて思わない。
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