第1章【森下姫奈と王子様】

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「……きなの、――くんのこと」 「……林(ハヤシ)さん」 告白だ! 何だってこんな場所で告白してるんだ……と思いながらも、つい息を潜めて聞いてしまう。 「まだ会って間もないのにって思うかもしれないけど……、好きになっちゃったの」 告白しているのは女の子のようで、緊張感が声からも伝わってくる。 同じ女子として「頑張れ!」と応援したくなり、思わず手をギュッと握った。 けれど彼女の想いも私の応援も届かなかったのか、相手の答えは「ごめん」だった。 「……やっぱり……ウワサは本当なのね」 「ウワサ?」 「好きな人……いるんでしょ?藤崎くん」 藤崎と聞いて私は隠れていた場所から少し顔を覗かせて2人を探した。 ―――……いた、藤崎ソラ、王子様だ。 倉庫のダンボールに隠れるようにして向かい合っている王子様と、林さんと呼ばれた女の子。 王子様はうつ向いてしまった彼女の頭にポンと手を乗せた……。
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