第1章【森下姫奈と王子様】

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「ごめんね、俺も片想いのツラさを痛い程知ってるのに、林さんにもさせなきゃいけないんだね」 「…………」 「でも林さんの気持ちに応える事は出来ないんだ、ごめん」 林さんと呼ばれた彼女は少し間を空けてから、「大丈夫、藤崎くんに気持ち伝えられただけで満足だからそんな顔しないで?」と言って、頭に置かれた手をそっと下ろした。 「……仕事ではいつもみたいに接してくれる?」 「林さんがそれでいいなら」 「良かった……、じゃあまた仕事仲間としてよろしくお願いします」 「ん、よろしくお願いします」 王子様の答えを聞いた彼女は、笑顔で手を振って帰って行った。 残された王子様はしばらくその場に立ち尽くしていたけれど、私は彼女のナイスファイトに心の中で拍手を送りながら、出るタイミングを逃した事に少し焦っていた。
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