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「あ、お、お疲れさまでーす」
誤魔化すように努めて明るく挨拶をして王子様の横を通り過ぎた…………つもりだったけれど、案の定そうは行かなかった。
肩に掛けていた鞄をグイッと引かれてしまい、足を強制的に止めさせられる。
「……あ、あの」
「お前、今の聞いてたよな?」
「き、聞いてませんよっ!今来たばっかりだし」
「ふーん」
王子様は目を細めて私を見下ろしている。
疑いは全く晴れていないらしく、掴んだ鞄を放そうとはしてくれない。
「――どうかしましたか!」
私が派手に倒したトルソーの音を聞いてなのか、警備員さんが懐中電灯を手に走ってやってきた。
ある意味助かった……と思った。
「お疲れさまです。さっき彼女がこのトルソーを倒してしまって、今直していた所なんです」
王子様が王子様スマイルで白々しくそう告げた。
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