第1章【森下姫奈と王子様】

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「あ、お、お疲れさまでーす」 誤魔化すように努めて明るく挨拶をして王子様の横を通り過ぎた…………つもりだったけれど、案の定そうは行かなかった。 肩に掛けていた鞄をグイッと引かれてしまい、足を強制的に止めさせられる。 「……あ、あの」 「お前、今の聞いてたよな?」 「き、聞いてませんよっ!今来たばっかりだし」 「ふーん」 王子様は目を細めて私を見下ろしている。 疑いは全く晴れていないらしく、掴んだ鞄を放そうとはしてくれない。 「――どうかしましたか!」 私が派手に倒したトルソーの音を聞いてなのか、警備員さんが懐中電灯を手に走ってやってきた。 ある意味助かった……と思った。 「お疲れさまです。さっき彼女がこのトルソーを倒してしまって、今直していた所なんです」 王子様が王子様スマイルで白々しくそう告げた。
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