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しかし、王子様は追いかけて来ようとはせず、その場でこちらを見ているので私は思わず……、
「あんたなんか白馬の王子様じゃない!このっ、黒王子!!」
と、捨て台詞を吐いて車を発進させた。
ハンドルを握りながら、ハアハアと息を整える。
――……やってしまった……気がする。
でも、すごくスッキリとした気分。
王子様と呼ばれて女性客を魅了し、同僚を魅惑した彼の本当の姿は、心の汚れた最低な男だった。
見た目だけ王子様でも中身が伴っていなければ意味がない。
もちろん彼自身も、王子様と呼ばれる事を望んではいないのかもしれないけれど……。
私は何かをやり遂げた勇者の気分で家路につき、鼻歌を歌いながら今日1日の自分に乾杯をした。
“黒王子”と言われてその場に残された王子様が、不敵な笑みを浮かべていたとも知らずに……――。
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